「ストレッチ生地」

「ストレッチ生地」

デザイン性に三次曲線が用いられたソファ等の場合、一般的に表皮材をその形状に綺麗にフィットさせることは難しいものです。

それゆえ部分的にタックを取ったり立体縫製を駆使したりと、少なくとも二次曲線を用いたデザイン性と比較すると相応に手間を要する作業になります。

また、しわを消すためにも細かな調整が可能な張り込み仕様のほうが望ましく、いわゆるカバーリング仕様においてこのような形状を綺麗に表現することは難しいことが現実です。

それゆえ、そのような形状を表現するために表皮材にはストレッチ生地が用いられることが多いものの、性質上それ自体の表情としては単調になりがちな印象を持っていました。

ソファ用の張地として多くを用いている実績からもイタリア生地メーカー各社と接する機会は少なくなく、何年も前よりこのようなストレッチ素材を紹介されていたのですが、現実的に単調なものが多くそれらを採用することに積極的ではありませんでした。

今年においても某イタリア生地メーカーの担当者が来日され、例年通り多くの新作を紹介されることになったのですが、今年においてもジャンルとしてストレッチ素材もいくつか紹介いただくことになりました。

今まではその表情からも興味を抱くことはなかったものの、今年においてはその限りではなく、生地自体の表情としてもおもしろいと感じられるものも相応に見られます。

その瞬間に、それらを効果的に用いることが出来る新たなソファデザインや他の使用方法についても頭に浮かんできます。

ソファにおいては影響力が小さくない張地を活かすためのデザインアプローチも少なくなく、当然のように小さなサンプルより完成形のイメージを膨らませることになります。

このように、素材より新たなデザイン性に結び付くことも少なくないもので、そのように考えると用いられる素材と共にデザイン性も進化し続ける必要があるのでしょう。

「製品開発」

ウッドフレームタイプのソファにおいても、張りぐるみタイプ同様にその座り心地がとても重要な要素となることは言うまでもありません。

 

一方では、ウッドフレーム部分を製造するメーカーとクッション部分を製造するメーカーはまったく別と言っても過言ではないことからも、一般的にその座り心地において満足できるものは少ないことが現実です。

 

その反対に、張りぐるみソファ専門メーカーが独自にハイクオリティのウッドフレームソファを製造することはほぼ不可能とも言えます。

 

このことは以前にも記したことがありますが、いわゆる「餅は餅屋」と言うことであり、また各々はとても特殊性が高いジャンルゆえ安易に参入することは難しいものです。

 

先ずはそのことを理解する必要があるのですが、意外と安易に考えがちなこともあり、結果としてハイクオリティとはとても言えない製品が開発されている現実もあるのでしょう。

 

それゆえ、各々の分野における専門メーカー同士が力を合わせる必要性があり、何よりも双方が尊重し合える技術力を有しているのか見極めることがとても重要になります。

 

その分野のプロ集団だと感じることが出来れば安易に口出しするようなことはないのでしょうが、コスト面のせめぎ合いになると意外と安易にデザイン性に手を付けることが少なくないのかもしれません。

 

例えばですが、背もたれフレームの本数を減らすとか、座クッション上面の角度を無くすとか、その時点で単に似て非なるものをつくり出す方向に向かっていることを認識すべきなのでしょう。

 

特にソファにおいては立派に製品化されている製品であってもデザイン性において大いに疑問が残るものも少なくないため、おそらくこのような過程にてデザイン性が犠牲になったものと思われます。

 

デザイン性の絶対的な底上げのためにも、健全な議論を経たうえで製品化してもらいたいとの気持ちです。

「ファーストインプレッション」

ソファの張地については、展示品ズバリを選定されることは珍しいことではありません。

 

一般的には小さな生地サンプルを見ただけで実際張りあがった完成形をイメージすることは難しいもので、それゆえサンプルは大きいことに越したことはありません。

 

それでも限界がありますので、例えば検討中の張地にて実際張りあがったソファ写真があればかなりイメージしやすくなります。

 

それが同じモデル/サイズとなるソファであれば更にイメージの精度は上がりますので、この点において多くの製造実績を作ることが必要なのでしょう。

 

もっとも、選定可能な張地の種類が5種ほどに限られるのであれば、全種類の張地で張り上げたソファ写真を準備するだけで済むのですが、選択肢の幅を広げることにより同じモデルであっても違う表情を見せることになりますので、それがある意味ソファの醍醐味とも言えるのかもしれません。

 

ソファの代表的な表皮材としてはファブリックに限られることもなく本革の選択肢もあり、またこれの種類や色数も豊富なことからも、同じモデルであってもまったく違う印象を与えることが出来るのです。

 

更に、ソファは見て楽しむ家具ではなく寛ぎの機能を有するものゆえ表示材の質感や触り心地もとても重要な要素となることからも、その点においてもその選択肢が広いことに越したことはないのです。

 

ファブリックの場合はやわらかいタッチが好きな人も居ればパリッとしたタッチが好きな人も居ますし、また本革の冷たい感触やそこから醸し出される高級感や緊張感が好きな人も居ます。

 

また設置される場所によって表皮材が与える印象も違ってきますので、そうなるとかなり迷うことになると思われます。

 

いずれにしても、ファーストインプレッションは意外と大きな要素になりますので、各種選択に迷った際にはこれを信じても間違いは少ないようです。

「消耗部材」

ソファは体を預ける家具ともあり、必然的に消耗部材と言われるものが多く存在します。

「へたってしまった」との言葉を耳にすることも多いと思われ、多くの場合は座面や背クッションの内部ウレタンの状態のことを指します。

特に座面には体重がダイレクトに掛かりますので、お尻の部分が凹んで戻らなくなってしまったり、前方部分が潰れてしまったりと、これは典型的な内部ウレタンのへたりが原因となります。

一般的に「へたる」とはその形状が著しく変化して戻らなくなってしまうことや、著しくやわらかくなってしまう状態のことを言い、いずれにおいてもソファとして正常に機能しなくなることを意味します。

そもそもソファにおける消耗品の代表的なものとも言えるのですが、高比重のウレタンを用いることによりその耐久性には大きな違いが生じます。

ウレタン比重とは1立方メートル当たりの重量のことを指し、一般的には20kg~30㎏/㎥程度のウレタンが用いられるのですが、50kg/㎥以上(70kg/㎥を超えるものもあり)を用いることにより耐久性はかなり増します。

しかしながら一般的なヴォリュームゾーンとされる価格帯製品に多くを使用することはコスト的に難しい現実もあるため、ソファは典型的な消耗品として認識されてしまったようです。

同様にコスト比率が比較的高いものには表皮材があるのですが、これにおいても価格帯により顕著に違いが生じる消耗部材になります。

直ぐに破れるようなことはなくても毛羽立ったり毛玉が発生したりと、早々に使用感が表れてしまうことも少なくありません。

ゆえにそれらは工場に戻すことなく容易に交換可能な仕様であることが必要とも言えますのでその点はチェックする必要があります。

それ以前に構造体が壊れてしまったりベースクッション材が機能しなくなったりするようでは本末転倒とも言えるものの、これらはチェックすることが難しい部分ともあり実績のあるメーカー製品を選定されることをお勧めします。

「海外ブランド」

家具において、一般的に海外ブランドはデザイン性に優れ、且つ品質が高いがその分高額とのイメージがあります。

老舗有名ブランドであればそれも間違いではなく、家具デザインを志した頃より特にイタリア有名ブランドには少なからず憧れも抱いていました。

家具が設置される器となる建築業界で学び、7年ほど経過したところで家具業界に戻ったタイミングでは、インテリアデザインを学ぶためにイタリアでの短期留学の機会も得ました。

その間はミラノに在住していたのですが、当時はギリギリ20代だった若さもあり毎日がとても刺激的で、授業のない週末においてもイタリアのいろいろな部分に触れるべく精力的に動いていたことも記憶に新しいものです。

家具デザイン界において巨匠と言われるような方の郊外にあるご自宅(豪邸)も訪問させていただきましたし、手描きにて椅子の原寸図を作成している仕事部屋も見せていただきながら現実的なデザインのお話もお聞きすることが出来ました。

また、知り合い筋を通じてミラノ市内の一般住民が住む住宅や集合住宅等も見学させていただきましたし、その中で実際の暮らしぶりについても感じとることになりました。

何よりも皆さんとてもお洒落に暮らしていることが印象的で、これは贅を尽くしたとの言葉とは対極にあるような一般住民のセンスとなることからも、ある意味本物のセンスを目の当たりにした感覚でした。

また先入観を覆されることとして、イタリアの多くの皆さんはとても勤勉に仕事をこなしていることが印象的でした。

家具づくりの現場では職人さんたちの職人気質を目の当たりにしましたし、そのような文化が根付いているイタリアにて製造される家具のすばらしさの秘密に触れたことはとても有意義でした。

そのような歴史的背景からすると追い付くことはなかなか困難なことだとも思われますが、他国から見て憧れを抱かれるような日本の家具づくりの一助となればとの想いを新たにしているところです。